『おちんちんの本』 その5

⑤手術は三センチが分かれ道

方針イメージ

 

 医師が手術を考える場合、ほんとうに手術が必要かどうかを判断して、必要があるときには「手術適応がある」という表現をする。

 この手術適応のなかにもレベルがあって、医師の立場から考えるとどうしても必要である、しなければ近い将来生命にかかわることが予想されるというような場合を絶対的適応といっている。これに村して、できるだけ手術したほうがいいという程度の場合が、相対的適応である。

 さて包茎の場合だが、かんとん型で痛みもひどくむくみもでているような特殊な場合を除けば、ほとんどが相対的適応となる。一日を争って手術を受けることはないが、真性包茎やかんとん型包茎の人は、自分のスケジュール(結婚式、入社式など)に合わせて、余裕をみて手術を受けたほうがいい。

 ここで問題になるのが仮性包茎である。多くの包茎手術専門医は、この層に包茎コンプレックスを抱かせ、一人でも多くの人に手術を受けてもらおうと、雑誌などで「包茎百害説」をふりまいているが、前述したように仮性包茎は健康や機能にほとんど問題がないので、手術は完全に相対的なものであり、判断が難しくなっているのである。

 私のクリニックでは仮性包茎の患者は全患者の六割に当たっているが、そのうちの三~四割の方には手術を行っていないのが現状である。その理由は、いままで述べてきたような内容を理解してもらい、包茎に対する誤解から来院した人には誤解を解き、手術を思いとどまるよう説得しているからである。

 では、どんな場合に仮性包茎の手術をしたほうがいいと判断しているか、その基準をここに示してみよう。


1、勃起したときの包皮の余りの部分の長さが三センチ以上の場合。

 これはあくまでも勃起した状態のオチンチンでの尺度だが、三センチ以内であれば包茎としてはかなり軽いもので、まったく手術の必要はない。余っている皮が三センチ以上になる中・高程度の仮性包茎の場合、機能的には問題はなくても、平常時であれ勃起時であれ、かなり煩わしさが生じてくるものなので、手術を受けたほうがいいと判断している。余っている包皮の長さの測り方は、勃起状態で亀碩に近い部分で包皮をつまみあげ、その長さを測るのである。心配な読者は試してみるといい。


2、コンドーム装着時にズレがひどい場合。

これは余っている包皮が多いために起こる障害の一つだが、セックスの最中に余っている皮のためにコンドームがずれてしまうことがある。このような具体的な障害を訴える人の場合は手術を受けたほうがいいだろう。


3、セックスのとき、亀頭が包皮のなかに人りこみ感度が悪くなる場合。

 勃起時に亀頭が露出していても、包皮がたるんでいたりすると、セックスの最中にいつのまにか亀頭が包皮で包まれてしまい、膣壁との摩擦間を感じられなくなってしまうことがある。こんな状態になる人も余っている包皮を切除したほうがいい。


4、亀頭包皮灸を繰り返している場合。

 これは恥垢が原因となって起こす炎症なので、つねに清潔を保っている仮性包茎なら問 題ないが、恥垢がたまりやすく炎症を起こしやすい体質の場合、仮性包茎でも亀頭包皮炎 を繰り返す場合がある。これも包皮そのものを切除したほうがいい。


5、コンプレックス、見た目の悪さ、臭い、恥垢の量などの総合判断。

 以上のようなことを統合的に判断したうえで、患者とともに考えて手術の結論を出している。カウンセリングの時間がかなり長くなるが、医師と患者がともに納得したうえで手術を行わないと、いい結果は得られない。この互いの「納得」というところに最後の拠り所があるのである。