『おちんちんの本』 その4

④包茎の三つの種類

方針イメージ

 

 さて、いま述べてきたように、包茎にはその程度や状態に応じて三つの種類がある。
それぞれ症状が異なり、これら全部をひっくるめて「包茎は…」と論じることにはかなり無理がある。
それぞれどこがどう違うのか、ここでじっくり解説しよう。自分のオチンチンに多少でも不安がある人は、よく読んでほしい。

■真性包茎
 これは亀頭部分がスツポリと包皮で覆われていて、勃起しても頭を出せないオチンチンである。
自分で皮をめくろうとしても包皮口が狭いために痛くてできない。

真性包茎は私たち泌尿器科の医師から見れば、明らかに「病気」である。前述した恥垢もたまりやすく、たまった恥垢は臭いばかりではなく、慢性的な炎症を繰り返したり、細菌の温床となったりする。

そのうえ最悪のことに、皮がむけない、むこうとすると激痛があるということは、女性器への挿入時やピストン運動の摩擦に耐えられないということだから、セックスができない。つまり種族保存の本能をまっとうすることができない。これは完全な機能障害だから当然手術が必要になるし、後で詳しく説明するが、その手術には健康保険も適用される。人類最古の外科手術はエジプトで真性包茎に対して行われたともいわれている。

 このように真性包茎は人類最古の病気の一つであるにもかかわらず、とりあえずの日常生活に支障をきたさないから、という理由でほおっておく人が多い。

 しかし、これはとんでもない判断である。病気の温床を抱えて生きているようなものであり、一生セックスしないですますつもりかどうかわからないが、結婚、ということになれば、明らかに性生活にも悪影響を与える。

 もし、いまオチンチンを見て、どうしても皮がめくれないようなら、できるだけ早い手術をお薦めする。


■かんとん型包茎
 これは真性包茎と仮性包茎の中間的な症状で、痛いけれど無理すれば亀頭の露出は可能というタイプである。「かんとん」という聞きなれない言葉は、漢字で「嵌頓」と書き、医学用語で臓器などが正常な場所からずれて元にもどらない状態を意味する。

 つまり無理して皮をむいたはいいが、そのままの状態で元にもどらなくなってしまった状態をいう。包皮ロが小さくて締めつけがきつい、そのうえ覆っていた皮膚がなくなり、露出したとたん亀頭が大きくなるのでこんな状態になってしまう。

 この状態は、非常に危険な事態を招くことがある。平常時に無理してむいたはいいが、そのままの状態で放置しておくと、亀頭部の血液やリンパ液の循環が悪くなり、亀頭にむくみが生じてくるのである。こうなればますますもどらなくなるし、それでもほっておけば血液が流れていかない亀頭は腐ってしまう。

 もっとも、そこまで至る以前に激痛があるので、救急車で病院へ直行ということにもなりかねない。とくにそんな状態で勃起すれば、さらに締めつけがきつくなって、相当な痛みがでるはずである。

 手術が必要かどうかは、その締めつけのきつさによって判断すべきだろうが、露出したときに痛みが伴うようでは、おちおち勃起もできないし、セックスにも集中できないだろう。ほとんどの場合は真性包茎同様に手術を受けたほうがいい。


■仮性包茎
 手術を受けるべきかどうか、その判断がもっとも難しいのが仮性包茎である。というのは仮性包茎は単純に包皮が余っているというだけの状態で、包皮口の締めつけがきついわけでもなく、セックスに関しても生殖能力という面では、機能的にまったく問題がないからだ。

 具体的にどうなっているかといえば、ふだんは余っている皮に亀頭が包まれているが、勃起すると露出するケース、あるいは手でむいてやると露出するといった状態である。またふだんの状態も、余っている皮の長さによって完全に覆われていたり、少しだけ亀頭が見えていたりとかなり幅がある。

 この程度の違いをどこまで見るかだが、日本人のほとんどは多かれ少なかれ皮が余っている。なにもしなくても、常に亀頭が露出しているという人のほうが少ないと思う。

 仮性包茎は露出する必要があるときは完全に露出するので、セックスのときに痛みを伴うこともないし、きちんと洗ってさえいれば、恥垢がたまって臭いとか不潔だという心配もない。

 つまり健康や機能に関してはまったくといっていいほど問題はなく、したがって仮性包茎の手術は健康保険の適用もまったく受けない。もちろん手術を受けないからといって、人生が真っ暗になることもない。

 だから医師として手術すべきかどうか、非常に迷うのである。