雑誌『ジュバンス』記事 その4

◆誰もが悩む性器の大小(1994/7月号)

方針イメージ

 

~巨根願望は幻想、健康な恋愛を~

 今回は、「短小コンプレックス」について話してみよう。

 今時の中学生は修学旅行の時、風呂に入るのに、海水パンツをはいて入るという。これは、性器について誰もがコンプレックスをもつているということを、いちばん端的に表わしている事柄だと、私は思っている。

 人と入浴して他人の物を見、正常な形や大きさを学びとれる反面、他人のオチンチンはいつも真上からしか見ない。自分のペニスとは見る角度が違うので大きく見えてしまうということが多い。自分のオチンチンが小さく見えやすいということは、見方によっては、コンプレックスを強くしてしまう可能性があるということだ。

 私は毎日、いろいろな大きさのオチンチンを診察しているが、やはり大きく見えてしまう。実際、大きい人から小さい人まで、顔や体型が違うのと同じに、かなり個人差があるのは事実である。

 では、自分のが小さかったらどうであろう。

 ″巨根願望″というのは、男性が本能的にもっている性のようなものであるが、結論から言って、性器の大小は、極端に病的な場合を除いて、医学的に全く異常はなく、生殖能力に何一つ悪影響をもたらさないということだ。

 実際、ふつうの男性がある程度の性的体験をつめば、″巨根願望″は幻想であると、誰もが気づいていく。もちろん人によって差はあるが、精神的にも肉体的にも、相手の女性を満足させることができたとき、と言っておこう。

 それは、-度や二度の未熟な性交渉やナンバ等で達するものでなく、男女が互いに十分信頼し、愛情を伴ったものでなくてはならない。女性の体は非常に複雑で、膣自体の感覚は大変鈍感である。これが相手に合わせて反応するまで時間を要すると理解すればよいだろう。

 だから、ペニス自体の大きさが問題なのではない。″巨根願望″を乗り越えるには、何より健康な恋愛をすることが、大事だということだ。

 さて、この男の悲しい″巨根願望″ につけ入る悪徳商法もあるので、それについてもぜひ知っておいてほしい。

泌尿器科病院の広告で、「長茎術」「脂肪注入」「亀頭増大法」等の見出しをよく見かける。しかし、人間の体を、安全に簡単に、大きくしたり、小さくしたりはできないのである。

 まず「長茎術」について。
 この手術をした人を、私は何人も診察しているが、手術を受けた本人が、長さが伸びたと答えた人は一人もいない。手術の方法は、病院により多少違いはあるのだが、ペニスの根部に切開の跡があり、下腹部の脂肪をとる程度のものである。

 ペニスの長さは、陰茎海絹体の長さによって決まるのだが、こんな切開では何の意味もない。

 次に「脂肪注入」。
 これは体脂肪をペニスの皮下に注入するという方法である。たしかに大きくはなるが不自然であるタテ長のちょうちんのようになる 私にはやはり理解できない。

 三つ目は「亀頭増大法」。
 今もポピュラーに行なわれていて、コラーゲンという組織成分を亀頭に注入する方法だが、これは一時的ではあるが、大きくなる。しかし永久に、ということはなく個人差はあるが、数カ月で吸収されてしまう。

 これらの手術はいずれも非常に高価で、そのわりに有効な手段ではない。しかも体に合わない人もおり、注射局所が変色したり変形したり、さらに持続効果がないことから、私は行なっていない。

 以上のように、本当に有効な手段はなく、簡単にお金で買えるものではないのである。親からもらった大事な体、まして男性にとって、おしっこのたびに顔を会わせる大事なオチンチンである。妙な広告にのせられて、一生後悔するハメにならないでほしい。